アートと社会とウェルビーイングを訪ねるウェブマガジン

文化的処方のKEYWORD
#02 クリエイティブ・ヘルス

| [文]ああともTODAY編集部  

『ああともTODAY』では、「文化的処方」という考え方を、より多くの人に届けたいと願っています。そこで『KEYWORD』という連載をもうけ、記事の中で使われる用語について、やさしく丁寧に紐解いていきます。背景を交えて、言葉が持つ意味を感じ取りながら「文化的処方」に自然と親しめる入口にできればと思っています。


クリエイティブ・ヘルスとは、アートや文化活動を通して、人々の心と体、そして社会とのつながりを健やかにしていこうとする考え方です。絵を描く、音楽を聴く、写真を撮る、ダンスをする、本を読む、美術館で作品を味わう――こうした体験は、心をやわらげたり、気持ちを前向きにしたり、人と人との関係を結び直したりする力を持っています。近年の研究でも、文化やアートにふれることがストレスを減らし、孤独感を和らげ、生活の質を高めることが示されています。 

「クリエイティブ・ヘルス」という言葉は、イギリス議会の超党派アーツ・健康・福祉議員連盟(All-Party Parliamentary Group on Arts, Health and Wellbeing)が2017年に発表した報告書『Creative Health: The Arts for Health and Wellbeing』1によって広く知られるようになりました。医療や福祉、教育、地域づくりなどの分野を横断しながら、芸術文化が人々の健康やウェルビーイング(よりよく生きること)を支える仕組みとして注目されています。また、文化的格差と健康格差のあいだに相関関係があることも明らかになっており、公的な文化施設には、文化活動へのアクセスを広げ、文化的な不平等を是正していく役割が求められています。 

ここでいう「クリエイティブ」とは、特別な才能を持つ人だけの創造的な活動を意味するのではありません。誰もが自分の思いや感情を表現し、他者と関わりながら生きる力を取り戻す、その営み全体を指します。病気の治療や薬に頼るだけではなく、文化やアートにふれることが心身を整え、日々を支える「もう一つの処方」となる――それがクリエイティブ・ヘルスの考え方です。日本でも、美術館や地域の文化活動を通じて、この新しい健康のかたちが少しずつ広がりはじめています。 

  1. https://aatomo.jp/artistic-activities-health-wellbeing/ ↩︎