アートが生まれる場所


『ああともTODAY』では、「文化的処方」という考え方を、より多くの人に届けたいと願っています。そこで『KEYWORD』という連載をもうけ、記事の中で使われる用語について、やさしく丁寧に紐解いていきます。背景を交えて、言葉が持つ意味を感じ取りながら「文化的処方」に自然と親しめる入口にできればと思っています。
文化的処方とは、文化芸術を創造し、享受することは人々の生まれながらの権利であるという考えに立ち、文化芸術の側から、誰もが文化と関われる環境・機会・関係性をつくり、文化参加を通して生まれる意味や価値を社会に広げていく「考え方・実践」です。特に、文化芸術への参加が精神的健康や社会的健康を支える可能性が、これまでの研究で示されています。
文化や芸術など、さまざまな表現に触れることは、気持ちをほぐしたり、自分の感覚に集中したり、人とのつながりを生み出したりします。医療を代替するものではありません。誰もがもつワクワクする気持ちや「やってみたい」という思い、日常から少し離れて自分自身の感覚や想像力に向き合う時間そのものが、心身の健康やウェルビーイングを支える「処方」になり得るのです。
イギリスなどで広がる Social Prescribing(社会的処方)について、世界保健機関(WHO)は、医療従事者が患者を地域にあるさまざまな非臨床的サービスにつなぎ、健康とウェルビーイングの向上を図るための方法と説明しています。単に症状を治療するのではなく、病気や不調の背景にある原因に働きかける、よりホリスティックな医療のアプローチです。またWHOは、社会的処方を、それ自体が一つの介入というよりも、患者のニーズに応じて地域の資源へとつなぐ「経路(pathway)」として捉えています。
こうした社会的処方が、医療・ケアの側から人を地域資源へとつなぐ仕組み・回路であるのに対し、文化的処方は、文化の側から人と文化の関係をひらき、そこで生まれる出会いや参加を通して、健康やウェルビーイングへと橋をかけていく取り組みです。
