公的な芸術文化施設が果たすべき社会的責任と何なのでしょうか。美術館を社会におけるケアの現場として役立てようとするテートの取り組みを紹介します。
イギリスの美術館であるテートは、美術館やギャラリーを社会的ケア実践の場所として活用するためのリソース開発に取り組んでいます。
「ニュー・タウン・カルチャー」はこの取り組みの一つです。このプログラムは、ロンドンのバーキング・アンド・ダゲナム区評議会が主導するプログラムであり、プログラム側のキュレーターとテートのキュレーターとが協働して実施しています。
ニュー・タウン・カルチャーでは、公的な資金で運営されている入館無料の美術館やギャラリーといった文化施設の社会的責任として、それらの施設が社会におけるケアや福祉実践のための資源としてどのように役に立つことができるのか、とりわけ子どもや若年層に社会的ケアを届けるためにどのように活用されるべきなのか、そのための方法が探求されてきました。
このプログラムの具体的な取り組みの一つは、若者への社会的ケアを行うスタッフ(例えば、少年院のスタッフやこども家庭ソーシャルワーカーといった人たち)のための支援ツールを開発することです。美術館や文化施設という場所が、若者やその支援をする人たちにとって安全で遠慮することなく訪問できる場所、そして新たな出会いの場所として利用してもらえるようになるためのツールです。
当事者である若者に加えて、ソーシャルワーカーや芸術家等との対話を経て、「ツールはインターネット上で公開され、ダウンロードできるようにすべきだ」と考えるに至ったと、テートのラーニング・ディレクターであるマーク・ミラーは語っています(YouTubeの動画が開きます)。
下にご紹介するビデオは、このツール開発の一環として制作されたものです。オリジナルの動画はテートのウェブサイトで公開されていますが、国立アートリサーチセンターが監修し、日本語字幕をつけました。